リズと青い鳥 感想・批評
そんなわけで見てみました。
うん。やっぱりこれ見てからユーフォ見た方が良かっただろうなぁ
でも、この順番でも全然ありだと思います。
では、内容に移ります。
※ネタバレあります。台詞の引用は不正確です。
この作品の位置づけ
ユーフォ劇場版誓いのフィナーレ(以下ユーフォ誓い)の感想にも書きましたが、この作品は黄前ちゃん2年生の物語が、映画として1本に収めるには尺が足りない関係で製作されることになったようです。
つまりユーフォ誓いの時系列の中で、みぞれ先輩と希美先輩の話だけを切り取ったという感じです。
これをスピンオフと言っていいのかわかりませんが、そういう位置づけになってます。
ただユーフォ誓いにもあったような、サンフェスやオーディションの描写は全くありません。
9割はみぞれ先輩と希美先輩の描写で構成されています。
最初から夏服を着てましたし、夏祭りの話もしてて、一応オーディションの話もしてたので、6月初旬から7月にかけての話だと思われます。
キャラデザの刷新
この作品は普通のユーフォ作品(つまり黄前ちゃん主人公の)と差別化を図るために、キャラデザが全く異なっています。
輪郭は少し角ばっており、顔に対する目の大きさも小さい。
髪の毛についても、いわゆる天使の輪は少なめ。影も少なめ。
色彩設定は全体的に淡白。肌の色は肌色よりは白という感じ。
個人的にこのキャラデザはすごく好きでした。
みぞれ先輩と希美先輩の関係性の儚さが、よく表現されていたと思います。
でも決してリアルというわけではなく、ユーフォ”より”はリアル寄りという感じ。
もしこれ以上劇画調にしてしまったら、ユーフォ作品のファンにとってとっつきにくい作品になってしまっていた可能性も考えられます。
しかしそのようなことは全くなく(少なくとも僕は)、するりと物語に入っていけました。
そういった点で制作側が導き出した最適解だったと言えると思います。
あとは楽器がCGじゃなかった?かな?とりあえずユーフォとは変えてます。
噛み合わない2人
進路の話を発端にして、2人の間には不協和音が流れ始めたわけですが、希美先輩ってこういう時意外と回りくどいんですよね。
グイグイいって、ごり押しで解決しそうだけど、みぞれ先輩が相手だからなんですかね。
夏紀先輩にみぞれ先輩が自分について何か言ってた?って聞くぐらいです。
確かに進路って高校生にとってはかなりセンシティブな問題ですよね。
自分がかなりふわふわと音大にいくって言ってるのに対して、みぞれ先輩は新山先生直々に勧められたわけで。
そのへんの心境は希美先輩自身の口からも語られてましたが、罪悪感もあったと思います。
自分がそんな気がなくても音大いこっかなーって言ったらみぞれ先輩もいくと言うということはわかりながらも、言ってしまった自分、みたいな。
こういう感情の機微な差異はやっぱり、ユーフォ作品全般すごいです。
みぞれと希美
リズと青い鳥という元になった作品について、僕は大まかな内容しか把握してませんでした。
なのでなんとなく、みぞれ先輩がリズで、希美先輩が青い鳥だろうなって思ってました。
元の作品でも青い鳥からリズの元を離れる決心をするのかなって思ってたんです。
そうじゃなくて、リズから青い鳥へ私の元から飛び立ってって願うんだなぁ・・
ここで相違があったのもあって、終盤の展開には胸を打たれました。
最後の練習後に、今まで本気ではなかったみぞれ先輩に対して希美先輩が悪態をつきます。
この場面は、希美先輩がみぞれ先輩を突き放す、まさしくリズそのもの。
また今までとは見違える演奏を披露したみぞれ先輩もリズに見える。
リズと青い鳥の物語とは異なり、ずっと一緒にいたいという意思表明が大好きのハグだと思うんです。
でも、みぞれ先輩は青い鳥と自分を重ねることでリズの心情を理解し、一緒にいるだけが愛ではないということに気付いたと感じました。
つまり、一緒にいてもいなくても、私達はつながっているという認識に置き換わったんでしょう。
そして希美先輩から漏れる、「みぞれのオーボエが好き」という台詞と、最後のみぞれ先輩の「オーボエを続ける」という台詞。
オーボエを続ける限り、希美先輩を感じられる感覚を得たのかなと。
なのでこのみぞれ先輩の台詞は、改めて音大に行くことを表明しているんでしょうね。
演出とコンテ、音楽
今回目を引いた、短いカットの多用。人が映っても足だけとか、体の一部だけ。
もしくは全く関係のない物を映したりなどなど。
シャフトがやりそうな演出ですが、あそこまで目につくわけではなく自然な印象を受けました。
切り取ってるところが自然な所作の部分だけだからですかね。
こういうときってコンテを切る時何を考えてるんだろうって思います。
ただ歩いてるときでも、翻るスカートや足元を映すことで、ある種の特別感?みたいなものを感じました。
どちらかと言えば実写的な演出ですよね。
一方で、細かい髪の動き(特にアップの時)や目を潤ませるところなんかはアニメ的で、うまく融合されていたように感じました。
髪の動きって実写的じゃないの?って思うかもしれません。
僕はアップの時に髪がはらりと落ちるところは、描くことでどのくらいの髪の量をどのくらいの速さで、といった点を自由に描写できるので、アニメ的であると書きました。
あと触れておきたい音楽。
牛尾憲輔が担当されてますが、良かった。
心象風景としての音楽ってやっぱり大事ですよね。
OPのところとかすごい好きでした。
まとめ
この作品を見る上で、希美先輩に依存するみぞれ先輩というユーフォ2期の印象が残っていたので、どういう答えを、どのように出すのか気になってました。
それをリズと青い鳥という題材でとても大きく膨らませて、非常に瑞々しく機微に富んだ演出で、見事に描ききっていたと思います。
普遍的な作品ならみぞれ先輩の希美先輩からの巣立ち、のような形で終わらせてしまいそうなところを、予想以上の答えを導き出してくれたと思いました。
いつもそうですが、表情一つ一つに細かい感情が乗っていて、とても考えさせられました。
演出やキャラデザについても、実写的な表現とアニメ的な表現が入り混じるということで、ある種の挑戦だったと思います。
もしこれがキャラデザもユーフォのままだったら、ここまでの評価は得られなかったでしょう。
漫画やアニメにしても、二次元的な創作の場合、フィクション感が増してしまうので、2人の関係性への没入感も薄れていたと思います。
とても良かったです。
ユーフォ誓いの演奏聴きたくなりました。
余談
コンクールが終わったあとの2人が気になるけど、どうなんだろ。